移動葬儀車をご存じでしょうか。昔から葬儀は会場で執り行うことが一般的でしたが、多様化が進む近年では様々なニーズに答えるために、固定観念にとらわれない式が増え始めています。その中の1つが移動葬儀車を使った式です。知名度は低めでしたが、ニュース番組で取り上げられたことから一気に認知されることになりました。この記事では、移動葬儀車がどんなものか、どの層にニーズがあるのか、どのようなメリットやデメリットがあるかを紹介していきます。
移動葬儀車とはなにか
移動葬儀車とは、その名の通り場所を選ばずさまざまな場所で葬儀を行うことができる車です。使用する車は普段よく目にするようなトラックですが、荷台部分が両外側に広がるため通常時は公道を走ることができます。このタイプは、もともと車内で宿泊したり料理したりできるキャンピングカーとして作られたものがほとんどでした。また、ドラマや映画の撮影現場でメイクルーム用に使用したり、俳優の楽屋の代わりでも使用されています。
通常の移動葬儀は、式で使用するトラック(移動葬儀車)に加え、トイレや控室として使用するトラック(サポートカー)の2台がセットになっていますが、式を行う場所によってはトイレや控室が必要なことがあります。その際は、サポートカーは必要ありません。通常の葬儀会場と同じく、さまざまなプランが用意されているので、家族や出席する関係者の人数などで柔軟に対応することが可能です。人数が多い場合は、車外モニターで中の様子を見ることもできます。
移動葬儀車のニーズを紹介
移動葬儀車は平均で20前後の参加者を見込んでいるため、主に家族葬を望んでいる方々にニーズがあります。また、小さな町では高齢化に加えて葬儀会場が不足していることもあり、会場が空くのを待つ必要がないため近年ではニーズが広がっているのが現状です。使用するトラックの荷台には階段があるため簡単に車内へ入ることができますが、足腰が悪い方にも配慮し、上下に移動できるゴンドラが組み込まれているタイプも存在します。
葬儀会場を使って行う式はスタッフにかかる人件費や食事代だけでなく、会場を借りる料金がかかってしまうため、金銭的に余裕のない方は躊躇してしまいがちです。しかし、移動葬儀車はトラックを駐車できる場所さえ確保できれば、会場費は節約することができますし、スタッフの人数も少ないため人件費もあまりかかりません。昔から先進国の中でも日本は葬儀代が高いと言われていました。少しでも安く済ませたい方に人気が出てきています。
移動葬儀車のメリット
特質すべき点は、上記の通り場所を選ばず料金も安いことです。料金は0~10キロで13,000円~20,000円が平均となっています。高齢化社会の日本では、葬儀に参加したくても会場までの移動手段がなかったり、足腰が悪いため参加をあきらめる方もいます。移動葬儀車なら駐車スペースを確保できれば自宅付近まで来てくれますし、公共交通機関を利用してアクセスしやすい場所で式を開くことができることもメリットです。
また、コロナ禍で密を避けるために車内は家族のみ、トラックの外ではモニター前に椅子を並べて式を行うこともできますし、入り口と出口が分かれているタイプも存在するため他人との接触を避けることができます。車内だけで行う場合、雨が降っていても問題なく行うことが可能です。トラックはフェリーに乗せることができるため、遠く離れた離島や事故や天候の影響で橋が通行禁止になっていても、フェリーが出港している地域なら問題なく式を行うことができます。
移動葬儀車のデメリット
場所を選ばないといっても、公共スペースを使用する場合はその自治体に許可をもらう必要があり、場合によっては使用できないこともあります。また料金が安いといっても、場所が離れている場合は通常の会場で式を行ったほうが安く済むことがあるため、近くに移動葬儀車を扱う会社がない場合は比較する必要があることがデメリットです。少人数で行う場合は問題ありませんが、参列者が増えるとトラックの外で並んだり式に参加しなければなりません。
雨が降ってきた場合はテントや雨除けを用意する必要があるため、余計に出費がかさんでしまいます。自宅周辺で行う場合は、近隣住民に説明をして了承を得ることに加え、その場合は通行人や車の邪魔にならないことを説明する必要があります。2021年現在は、まだ全国で普及していません。コロナ禍で移動葬儀車の利用が増えていますが、感染状況が収まらなければ需要が供給を追い越してしまいます。
まとめ
移動葬儀車は様々なメリットがありますが、場合によってはメリットがデメリットになってしまうこともあります。安いから、場所を選ばないからといって何も調べずに申し込むと、トラブルが起きかねません。急いでいても下調べはしっかり行い、見込んでいる参列者数や葬儀を行う日時などをある程度決めてから申し込みを行いましょう。また、事前にトラックを止めることができる場所を確保するか、自治体に使用できるかどうか聞く必要があります。